スタインウェイ社ピアノ工場 & 楽譜出版社訪問

一週間のヨーロッパ視察旅行も最終日。この日は朝9時にスタインウェイ社のハンブルグ工場入り口で待ち合わせです。たくさんのピアノ職人達がタバコとコーヒー片手に仕事始めの一服をしています。繊細な技を備えているととは思えない、腕っ節の太い男たち。タトゥーをいれている人も多数。ドイツのピアノ職人のほとんどはLudwigbergというヘッセン州の小さな街のピアノ職人養成所で学ぶそうですが、スタインウェイでは一からピアノ職人を育成するプログラムがあり、3年半の修業を経てスタインウェイ工場で働くプロフェッショナルになる人もいるようです。この日工場を案内してくれた方もその一人で、とても親切で真面目な女性でした。マイスター制度の面影がピアノ作りにも残っています。

(写真左)2時間に及ぶ見学の後、案内人のアンゲリカさんと。ほぼすべての工程を見せてもらいましたが、伝統的な手作りの工法は脈々と受け継がれている様子が分かりました。工場から連想されるベルトコンベア的な景色はなく、使い込まれた設備のなかで職人達がそれぞれの持ち場で黙々と作業しています。最終的なサウンドチェックはホールで行なわれ、熟練の4人の技術者によって厳密にテストされます。大ホールで力を発揮するスタインウェイならではのこだわりですね。

午後からは楽譜出版社との打ち合わせへ。内容はまだ詳しく書けませんが、持ち込んだ企画に対して最良の返事をもらうことができました。長い道のりの入り口に立ったばかりですが、少しずつ夢が広がります。 写真は最終日に撮影したハンブルグ港の夜景です。

クリムトとブリューゲルの絵&ウィーン楽友協会

ウィーンの美術館で観たクリムトとブリューゲルのコレクション。クリムトの「接吻」はウィーン観光のハイライトの一つです。クリムトが辿り着いたのはハプスブルクの栄光を偲ばせるような金箔、銀箔の色調。カメラは禁止だったのでお伝えできないのが残念です。他にはない独特な世界観に圧倒されます。写真は左から、歴史博物館の天井。中央がブリューゲル。16世紀の絵とは思えない面白さですね。人の仕草の描写が精巧で楽しい。

世界最高の音響を誇る楽友協会の演目はラフマニノフ作曲、ピアノコンチェルト1番とドボルザーク作曲、シンフォニー8番です。ポスターを見ると明日は内田光子のピアノリサイタルが予定されています。とにかく建物内部を見たかったので、30分前にチケット売り場へ駆け込み、残っていた5ユーロの立ち見席を購入。留学中に通ったドイツのオペラハウスには、立ち見席といってもたいていは簡素な腰掛けがあったですが、ウィーンのそれは文字通り立ち見。貴族文化の中心、容赦ないですね。演奏はまずまず良かったのですが、さすがに足が疲れました。

楽器博物館が面白すぎる

ウィーンの楽器博物館にはバロック時代から近代までの楽器コレクション、特にウィーンゆかりの作曲家と関わりの深いものが展示されています。時代を追って見て行くと楽器の改良が作曲家のイマジネーションを刺激してきたことがよく分かります。他では絶対に見ることが出来ない貴重な楽器ばかり。まずはギターの前身リュートやチェロの前身ヴィオラ・ダ・ガンバなどがある弦楽器の部屋から。

ウィーンの楽器博物館では弦楽器や鍵盤楽器の歴史を辿る事ができます。(写真右)ウィーンの楽器制作家シュタインのフォルテピアノ。モーツァルトは7才のパリ旅行でシュタインに初めて会い、その後も親交が続きました。チェンバロからピアノへと鍵盤楽器の主役が移った時代です。(中央)旅行用ミニピアノ。旅の多い作曲家に人気があり、モーツァルトの父レオポルドも購入したとか。筆立て付きで作曲するのに役立ちそうです。(左)ウォルター制作のピアノ。この時代になるとダイナミックの可能性がぐっと広がります。ウォルターはベートーヴェンからも注文を受けて、画期的なピアノを開発。ピアノソナタ「ワルトシュタイン」以降の作品に多大なインスピレーションを与えた楽器。

1930年頃にベーゼンドルファー初期のピアノが登場。それ以降、ウィーンのピアノ制作の主役を独占していると言っていいでしょう。エラール、ブルートナーなども置いてありましたが、写真はほとんどベーゼンドルファーです。インテリアの流行に合わせてピアノの外観が様々に変容しているのが面白いですね。この博物館、人も少なく半日くらいゆっくりと時間が潰せます。コレクションの本を買ったので、帰国したらレッスンでも紹介したいと思います。

ウィーンの楽譜店 & 国立オペラ座

ウィーンの街中にある老舗楽譜店を訪ねると、モチコピアノスクールでお馴染みの赤いくまさんを発見。ドイツのみならず、オーストリアでも広く使われているそうです。ウィーンで三泊した後、この楽譜の出版社を訪問します。お店の方のお話では EuropoelischeKlavierschule-ヨーロッパピアノ教本-という楽譜が広く親しまれているとのこと。ページをめくると、初めに黒鍵遊びから入るメソッドで書かれています。こちらも持ち帰って研究したいと思います。

今夜はウィーン国立オペラ座へ。当日券でマスネのオペラ「マノン」のチケットをゲット。フランスらしいamourな世界観にクラクラするも、この豪華絢爛なオペラ座の雰囲気は感動です。中央階段を上がるだけで特別な気分になります。でも当時は建築や演目が酷評され、設計士が自殺するなど波乱の歴史があるそうです。世界屈指の歌劇場オーケストラを有し、小澤征爾さんが芸術監督を務めたことでも有名です。

ピカソ展のオープニングパーティー

空気が冷たくて気持ちがいい冬の朝です。美味しいドイツの朝食を頂きハンブルクを出発。ピカソ展が開催されるブレーメンのクンストハレへ向かいます。有名な音楽隊の像は街一番の撮影スポットです。

ドイツの教会は美しく荘厳な空気が漂います。中に入ると音楽大学のレッスン中でしょうか、オルガンの音が鳴り響いていました。ブレーメンの美術館で開催されるのはピカソにとって特別な存在だったモデル、シルベッタさんをテーマにした企画展のオープニングパーティーです。

世界中から集められたコレクションの数々は圧巻です。ピカソって才能のカタマリみたいな人。どの作品も面白いしずっと見ていても飽きることがありません。パーティーにはシルベッタさん本人とピカソファミリーも来られていました。

懐かしのハンブルクに到着

今日は第二の故郷、ドイツからお伝えします。画廊を経営されている知人に通訳として同行中です。ハンブルクは高校生の時に初めて降り立った海外の地。リューベック音大に留学していた頃は何度もこの空港を通って日本とドイツを行き来しました。日本では殆ど活躍しない真冬のダッフルコートを着ているのですが、最近の福岡と比べたら暖かいくらいです。旅の後半は自由行動なので現地の音楽事情をリポートしていこうと思います。ご期待ください!

(写真上)パリ、ドゥ・ゴール空港でハンブルク行きの飛行機待ち。疲れがすでにピークで耳、喉が荒れてきました。生徒さんのお母様から頂いた蜂蜜100%飴を舐めてしのぎます。(写真下)ようやくハンブルク空港に到着。ここから空港に直結しているSバーンで中央駅近くのホテルへ向かいます。久しぶりに降り立ったドイツに懐かしい思いがこみ上げつつも、早く寝たいのが本音です。