スタニスラフ・ブーニン著 カーテンコールのあとで

ブーニンと言えば、1985年のショパンコンクールの覇者。彗星のごとく現れ、日本でもセンセーショナルを巻き起こしたピアニスト。その後は世界で活躍しましたが、早すぎた名声と病気の不幸も重なってか、第一線の舞台からは退いていましたから、懐かしく思う当時のファンも多いのではないかと思います。先日からワルシャワで開かれていたショパンコンクールについて、生徒や保護者の方と話す機会が多かったこともあり、自宅に保管してあったブーニンの著書を手に取りました。すると、その文章の面白さにすっかり虜になり、一日のうちに一気に読み終えてしまいました。

ブーニンは祖父にゲンリヒ・ネイガウス、実の父にスタ二スラフ・ネイガウスをもつ言わば血統書つきのサラブレットであることは有名です。加えて、母はモスクワ音楽院でゲンリ・ネイガウスの門下生として学んだピアニストで、入学試験の際にはベートーヴェンのピアノコンチェルト5曲を準備したとの逸話が本の中で語られていました。やはり母の影響は絶大ですね。幼少期からピアノ以外にも、文学や哲学に強い興味を示していたらしく、この本の随所に文才が光っているのも頷けます。

ブーニンがショパンコンクールで優勝したのがちょうど40年前のことですが、今では歴史の1ページを垣間見るような、ソ連での出来事、コンクールの舞台裏、リヒテルのリサイタルを初めてモスクワで聴いたときのエピソードなど秀逸なお話がたくさんでした。一読の価値ありです。