
ピアノと身体が接する鍵盤、そして鍵盤が間接的に弦を打つまでの10ミリの余白。ピアニストたちはこの小さな空間を自分の指先で操り、無限に広がる音の世界を描きます。そのためには「タッチ」を磨くことが大切です。かつて、日本のピアノ教育では手の甲を高く保ち、指先を丸めて鍵盤に対して真っすぐに立てるように指導がされていました。幼児期から「丸めた手」にこだわり、指の力みが取れなくなってしまったり、ひどい場合は指が奇形してしまうケースもあります。実際に他の教室から移って来られた生徒さんの中に、不自然な指導を受けた痕跡をみることがあります。幼児期の先生選びには気をつけて、無理のない姿勢、手の使い方を習得して頂きたいものです。
指を丸めてタッチすることで音の粒を揃えることが出来ますが、このタッチはあくまでピアノ奏法の一部にすぎません。手の基本ポジションは指がこわばらないようにゆったりと構え、手首をリラックスさせ、鍵盤に対してだいたい45度~60度の間を維持するように指導するべきだと思います。そして、さらに重要なポイントは、生徒さんが持つ手の特性と成長に合わせて、何が自然かを柔軟に考える事です。練習を頑張っている子ほど、手のポジションとタッチに意識を向けるとピアノが上手になると思います。