エドウィン・フィッシャーの芸術

コンサートに来て下さるお客さんの中には、驚くほどの知識と演奏を聴いた経験を持つ方がいます。クラシック愛好家の中の天上人のような。さて、先日そんな天上人さんから贈られた大変貴重な書籍とCDです。書籍は今では入手が難しいはず。本当にありがとうございます。

エドウィン・フィッシャーは1960年に他界した、ひと昔前のピアニストなので、残された録音は少ないですが、とりわけベートーヴェンの演奏で示された精神性は今でも多くのピアニストたちから尊敬を集めています。スイス生まれ。クラウディオ・アラウと同門だったり、パドゥラ・スコダや先日亡くなったアルフレート・ブレンデルを教えたことでも有名ですね。

そのフィッシャーさんの著書「ベートーヴェンのピアノソナタ」を初めて手に取ることになりました。この本はフィッシャーの弟子のために開かれた9日間の講義において、ベートーヴェンのピアノソナタを全曲解説した際の手記のようなものです。それぞれの楽曲についてだけではなく、ベートーヴェンの人間性や演奏について、さらにはピアノ練習の本質について哲学レベルでの考察がなされています。ピアノ上級者向けとは思いますが、レッスンでも折に触れてご紹介していきたいと思います。