音は生き物

先日、調律師さんと食事をした時に音響についての話になりました。その話の中で井尻教室の音響は極めて珍しく、他では見た事がないと話してありました。確かに、ヨーロッパの石造りの家で経験した響き。ピアノの音だけではなく、部屋に反響する「響き」を含めて聴くことができる貴重な空間だと思います。経験を積むにつれて音に影響を与える事には敏感になっていきます。例えば温度と湿度。天気が違うだけでピアノの響きは違ってきます。今の季節は空気がからっとしていて、一年の中ではヨーローッパの響きに近く気持ちのいいピアノの音がします。ただ、今は4月の発表会と5月に開催するコンサートの準備のため、ピアノを聴く時間がほとんど一日ということもよくあります。

ちょっと耳がつかれ気味ということで、気休め程度にピアノにかぶせた布。インテリアにもなり、音による疲れを軽減してくれます。単に耳休めのつもりでしたが、この布のお陰で基音のよしあしが分かりやすくなって音の指導をする際に一役かっているのです。音はまるで生き物。調律が変われば、部屋が変われば、天気が変われば。そしてこちらの気分まで変わって。とらえ所のない、奥深い世界なのです。